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  <混合ガス潜函作業の特徴>

  この項では、混合ガスを用いることによるメリットとデメリットについてご紹介します。

  1.メリット
  減圧時間の短縮
   大深度下での潜函作業に混合ガスを利用する最大の理由は減圧時間の短縮に
  あります。従来の空気呼吸による潜函作業では、圧力が高ければ高いほど、また
  作業時間が長ければ長いほど、体内には空気中の不活性ガス成分である窒素が
  大量に溶解、蓄積されていきます(組織内窒素分圧の上昇)。これらの窒素は地上
  復帰の際、『減圧』という方法を取ることによって、随時体外に排出されることになり
  ますが、当然窒素量が多ければ、減圧に要する時間も長くなります。狭いマンロック
  内での長時間の減圧は、作業者の疲労や苦痛を増大させるばかりでなく、作業
  効率の低下も招くことになります。窒素量が少なければ減圧時間も短いものとなり
  ますが、それでは、十分な作業時間を取ることができません。
   
十分な作業時間を確保しつつ安全な範囲内で可能な限り減圧時間を短縮すると
  いう、相反する要求に応える方法が混合ガス潜函作業なのです。圧気潜函作業に
  利用される混合ガスはトライミクスであり、これは窒素の一部をヘリウムに置き換えた
  ものです。ヘリウムも私達の身体にとっては不活性なガスですので、呼吸ガス成分
  全体に占める不活性ガスの割合は空気の場合と大きく変わるわけではありません。
  それなのにどうして減圧時間の短縮が可能になるのでしょうか?その秘密は、減圧
  時の呼吸ガス交換にあります。混合ガス潜函作業では、減圧の際に混合ガス呼吸
  から空気呼吸に、ついで酸素呼吸に切り換えながら減圧が行われます。混合ガス
  呼吸から空気呼吸に切り換わったときのことを考えてみましょう。呼吸するのは
  空気ですから当然ヘリウムは全く含まれていません。ガスは圧力高い方から低い
  方へと移動しますので、体内に溶解したヘリウムは、急速に体外へ排出されることに
  なります。一方同じ不活性ガスである窒素は、空気の方が混合ガスよりも割合が
  多い(分圧が高い)ため、逆に体内に溶け込んでいくことになりますが、窒素の
  取り込み速度よりもヘリウムの排出速度のほうが大きいので、身体全体で
  見た場合には、不活性ガス量は大きく減少することになります。同様の理由に
  より、その後行われる酸素呼吸によって、この傾向はさらに加速されることに
  なり、総じて減圧時間の短縮が図られることになります。


  混合ガスおよび空気潜函作業の減圧時間比較の図

  ◎窒素酔いリスクの低下
   
地上(大気中)と同様に函内で空気呼吸を行う通常の潜函作業では、作業圧力が
  0.3〜0.4MPa(3〜4kg/cm2)を超えるようになると、窒素酔いに罹る人が現れてきます。
  これは呼吸する空気中の窒素分圧が高くなり麻酔作用が生じたためで、酒に酔った
  ときと同じような状態を示します。この状態は、圧力が高くなるにつれひどくなって
  いきます。
   
窒素酔いの主な症状としては、爽快な気分、自己昂揚感、過剰な自信、意味のない
  笑い、判断力の低下、仕事や安全に対する無関心、異常感覚などみられ、意識を
  喪失する場合さえあります。このような状態に陥った場合、知覚や判断力が大幅に
  低下するため、作業を正確に行うことができなくなるばかりでなく、注意力などの
  低下により作業の安全性さえも損なわれる恐れが出てきます。
   窒素酔いの特徴は、その出現は曝露圧力が高いほど急速であり、加圧中や最大
  深度(最高圧力)到達後最初の2分前後で発生し、時間が経つにつれ症状が治まる
  ような気分になるといった点にあります(PB Bennett,1981)。
   
窒素の一部をヘリウムに置き換えた混合ガスを利用すれば、高気圧下に
  おいても窒素分圧の上昇を許容範囲内にとどめることができるため、窒素
  酔いを未然に回避することが可能です。

  
◎呼吸抵抗の軽減
   
潜函作業では、呼吸する空気の密度が作業圧力に比例して増大していきます。
  従って作業圧力が0.1MPa(2絶対気圧)では空気の密度は地上の2倍、作業圧力が
  0.2MPaでは3倍、0.3MPa
では4倍、0.4MPaでは5倍にもなります。空気の密度増加は、
  呼吸をするとき空気が気道を通過する際の抵抗(呼吸抵抗、正確には気道抵抗)を
  増大させ、肺の換気能力を低下させます。すなわち、空気が『重く』なるため、意識
  して呼吸動作を行わなければならず、また、肺の換気量が減少を補うために、激しい
  呼吸が必要となります。このような状況では、大量の空気(酸素)を必要とする
  重作業を行うことはほとんど不可能に近いと言えます。
   
空気成分の大部分を占める窒素を密度の小さいヘリウムに置き換えれば、呼吸
  ガス全体の密度を減少(『軽く』)させることができ、高気圧下の作業においても
  楽に呼吸することができるようになるため、肺の換気量も損なわれることが
  無く、激しい呼吸も必要としません

   表1に空気と混合ガス(トライミクス:ヘリウム・窒素・酸素混合ガス)の比重を
  示します。
 
                    -1.空気と混合ガスの比重の比較

ガスの種類

組 成(%)

比重

ヘリウム(He)

窒素(N2)

酸素(O2)

空気

79

21

1.0

トライミクス

40

40

20

0.663

50

30

20

0.580

25

50

25

0.794

35

40

25

0.711

45

30

25

0.628

  2.デメリット
  ●酸素中毒の危険性
   過度に高い酸素分圧は、酸素中毒という障害をもたらすことが古くから知られて
  います。混合ガス潜函作業では、混合ガス中の酸素濃度が高いほど相対的に
  不活性ガス(ヘリウムと窒素)の濃度を低下させることができるため、減圧症防止
  という観点からは有利になります。しかし、高分圧酸素は急性(中枢神経型)酸素
  中毒という障害を引き起こす恐れがあるので、使用する混合ガスの組成を考える
  場合、最大作業圧力と酸素分圧の関係を十分に考慮する必要があります。また、
  混合ガス潜函作業では、減圧時に酸素呼吸を行いますが、それほど高い酸素
  分圧で無い場合でも、長期間暴露されると慢性(肺型/全身型)酸素中毒の
  危険がありますので十分な安全管理が必要となります。
  (1)急性(中枢神経型)酸素中毒
    
急性(中枢神経型)酸素中毒では脳と神経系が悪影響を受け、どこか具合が
   悪いといった違和感や種々の神経症状から、重い場合には全身の痙攣や意識
   不明の状態が出現する場合もあります(表2)。酸素中毒により、直ちに死に
   至るということはありませんが、痙攣や意識不明のため、転倒による外傷や
   舌を噛むなどの二次災害が発生する恐れがありますので、これに対する注意が
   必要です。
     急性酸素中毒の症状に関する表
    急性酸素中毒の発生には吸気の酸素分圧と暴露時間が影響することが
   知られています。すなわち、酸素分圧が高いほど短時間で発生しやすい、
   ということになります。また個人差や体調などの身体的な因子も発生に大きく
   関与するといわれています。一方、激しい労作や呼吸抵抗の大きいマスクの
   使用は、体内に二酸化炭素(CO2)を蓄積するため、酸素中毒の発生と重症
   化を促進する恐れがあります。
    
万一、急性酸素中毒と思われる異常状態や症状が起きたときには、直ちに
   呼吸マスクを外し函内の空気を呼吸するようにすれば、症状の改善を計る
   ことができます。

  (2)慢性(肺型もしくは全身型)酸素中毒
    慢性(肺型もしくは全身型)酸素中毒は、0.5〜1.2気圧程度の比較的酸素
   分圧の高くないガスを長時間にわたり連続して呼吸したとき、または酸素
   分圧が1.2気圧以上で短時間のガス暴露(呼吸)を長期間繰り返しおこなった
   場合に発生します。その場合、肺や全身が悪影響を受け、肺の刺激感や
   息切れ、呼吸困難等の呼吸器症状のほか、しびれ、かゆみ、頭重感、吐き気、
   倦怠感等の全身的症状を生じることがあります。高分圧酸素のガスを呼吸
   しながら高気圧下の作業に従事する場合、慢性酸素中毒を防ぐには1日
   当りの、また連日行う場合には1週当りの酸素暴露量を制限する必要が
   あります。酸素暴露量を測る指標としては、通常、「肺毒性単位(UPTD)」が
   使われます。1UPTD(Unit of Pulmonary Toxic Dose)とは1気圧下で純(100%)
   酸素を1分間呼吸したとき、肺へ加わる毒作用の量を意味しています。慢性
   酸素中毒を防止するためには、暴露量を1日当り400 UPTD、1週当り2,000
   UPTD以下にする必要があります。混合ガス減圧表には、通常、作業圧力/
   高圧下の時間の組合せに対する減圧スケジュ−ルとともに、減圧を終了した
   時点に於けるUPTD値も併記されています。尚、UPTDは次式によって求められ
   ます。
   UPDを求める式
   万一減圧症に罹ってしまった場合、医療機関で行われる再圧治療は『酸素
   再圧』となりますので、酸素再圧治療による慢性酸素中毒罹患を防ぐためにも、
   日々の作業で体内に蓄積された酸素毒性量を正確に記録し、治療の際に
   医師に伝えることが必要です。

 
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