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    <世界の潜水事情(3)>
   潜水作業と女性潜水士
 
   昭和61年の男女雇用機会均等法施行以来、女性の社会進出には目を見張ら
  されます。政治の世界では、女性知事の活躍が新聞紙上を賑わしていますし、
  最近では拉致問題に対しての中山恭子さん(前内閣官房参与)の業績には非常に
  高い評価が寄せられています。経済界においても女性の活躍は顕著で、一部上場
  企業では女性の管理職への登用が増えていますし、企業のトップに立つ女性も
  少なくありません。身近なところへ目を転じれば、貨物の定期航空便では女性
  機長が操縦桿を握っていますし、新幹線にも女性運転手がいます。電車の女性
  車掌は、既に一般的とさえ言えます。このように、従来は男性の独壇場であった
  分野でも、今では女性が欠かせない存在となってきています。私たちの現場の
  周辺ではどうでしょうか?現場入り口で交通整理や建設車両の誘導を行う警備員
  には多くの女性が従事していますし、陸上での土木作業には女性作業員の姿も
  チラホラ見受けられます。しかし、潜水作業現場で女性を見かけることはほとんど
  ありませんし、実際に作業に従事いている女性潜水士はほとんど皆無ではない
  でしょうか?

   女性の社会進出がいち早く始まった外国の事情はどうでしょうか?米国では
  1950年代には既に潜水士として女性の活躍が始まっています。彼女たちは主に
  サルベージや沈船の調査、桟橋の補修といった潜水作業に従事していましたが、
  当時のことですので、潜水方式は当然ヘルメット式です。小柄な女性が重装備の
  ヘルメット式潜水器を装備して潜水することは大変なことだったと思います。
   米国の女性潜水士第1号(潜水士の組合に加盟した初の女性)であるダディ・
  フレイジャーさんは、その当時、身長が150cm、体重はわずか45kgでした。
  彼女のような小柄な体格にフィットする潜水装備は米国内には見当たらなかった
  ため、比較的小柄な日本の潜水装備を輸入して使用していたとのことです。
  このように、パイオニアなるが故に相当な苦労もあったようですが、潜水作業に
  関する苦労はそれほどでもなかったようです。そう、彼女は「水圧」と戦う以上に
  「偏見」と戦わなければならなかったのです。

   潜水学校時代も、潜水士として働き始めてからも、周りは全て男性ばかり。
  彼女の能力を評価してくれる人もいましたが、「女になんか潜水士が務まる
  はずがない」と考えている人の方が圧倒的に多かったのです。

   そんな逆風の中でも彼女は頑張りとおしました。潜水学校を1番の成績で
  卒業し、世界で最初の女性スクーバ・インストラクターにもなりました。また、
  始めて「サメ」に襲われた女性潜水士としても記録されました。彼女は、同じ
  潜水仲間の男性と結婚した後も潜水士としての仕事を続けていきました。
  彼女の夫が、「女房がテンダーの時は、絶対に潜水病に罹らない。」と語って
  いるように、潜水技術だけでなく潜水全般に関しても豊富な知識を持っていた
  ようです。現在82歳になったフレイジャーさんは、20人の孫たちと7人の
  曾孫たちに囲まれて幸せな余生を送っているそうです。

   さて、現在はどうなっているでしょうか?欧米では、海底油田開発が本格化
  していった1970年代以降、潜水作業を取り巻く環境が劇変しました。潜水深度
  しかり、潜水方式しかり。そんな中でも女性潜水士たちの戦いは続いています。

   現在33歳のステイシー・ヘッドさんは7年ほど前までメキシコ湾の海底油田
  基地で「オイルダイバー」(海底油田のパイプライン保守を行う深海潜水ダイバー
  のこと)をしていました。彼女はそこで4年間ほど働いていましたが、本当にきつい
  仕事だったそうで、彼女と同時期に働き始めた「男性」オイルダイバーは、わずか
  3週間しかもたなかったそうです。

   小さい時に「クストーの海底探検」というテレビ番組を見て以来、海の世界に
  引き付けられていたキャシー・マッキントッシュさんは、スクーバ・インストラクター
  から作業潜水士に転身した一人です。彼女は、男性潜水士に負けないように
  大変に努力しました。潜水作業の世界では、能力第一で、女だからといって
  甘えは許されないからです。ある日、沈埋管の固定のために管の上に砂袋を
  敷き詰めるという潜水作業の最中、突然、作業台船のクレーンが不調になって
  しまい、残りの作業を全て人力で行うことになってしまいました。その時、彼女は、
  男性潜水士たちが一袋ずつ運んでいる横で、一度に三袋ずつ運び、周囲を
  驚かせたそうです。もっとも、あんまりがんばりすぎたため、後で過換気症候群を
  起こして倒れてしまったそうですが!

   ジェニファー・ラナーさんは、二歳の娘さんを持つお母さん潜水士ですが、
  主な仕事は取水管や下水管などの取り入れ口や排水口のメンテナンスだそう
  です。したがって、ヘドロが堆積した海域での潜水作業も多いようですが、
  「そんなのは、いつものことよ。」と全く意にも介していません。本当は、オイル
  ダイバーの方が高賃金で魅力的なのですが、「いつも娘のそばにいることが
  できる」現在の仕事に満足しているようです。

   彼女達は一様に、「同僚の男性潜水士たちから『女のくせに』と言われたことは
  一度も無い。」言っています。この50年ほどの間に女性潜水士に対する作業
  潜水業界の意識は大きく変わったのでしょうか?

   ミシガン州で潜水のスーパーバイザーを務めるコレット・ウエザースプーン
  女史は、こう解説しています。

   「女性が作業潜水に従事できるチャンスは、以前より格段に増えている。特に
  港湾整備などの沿岸部での作業では、女性潜水士でも何の問題も無く作業
  できるだろう。大きな障害は、女性側の意識の問題である。『遠方での作業で
  家を離れる時間が多いと、子供の教育に差し障りがある』とか『潜水は好きだが、
  私には機械オンチだから』とかいうネガティブな意見があるが、男性にも機械
  オンチは大勢いるし、親が留守勝ちでも子供は立派に育つもの。それらに
  くらべれば、折角のチャンスを逃すほうが何倍も問題である。」

   また、海洋生物学者から作業潜水士に転身した異色の女性潜水士、エラ・
  ジーン・モーガンさんはこう分析しています。

   「女性潜水士への偏見は未だに残っています。例えば、女性は体力が無いから
  潜水作業には従事できない、という考えに根強いものがあります。然し筋力の
  差は陸上とは異なり、水中ではあまり問題になりません。現に、男性潜水士よりも
  何倍も早く仕事をこなす女性潜水士を何人も知っています。確かに女性の場合、
  男性に筋力ではかないませんが、かえって男性のように強引に力だけで作業
  しようとすることが無く、段取りや道具の使い方に工夫を凝らすため、かえって
  仕事が速くなるのです。このため、女性潜水士を歓迎している潜水作業会社さえ
  あります。

   また、女性は男性に比べて潜水病に罹りやすいと信じている男性も少なからず
  存在します。米海軍潜水実験部隊の報告によれば、減圧症罹患リスクに対する
  男女間に有意な差異は認められない、と科学的に明らかにされています。私は、
  何人もの男性潜水士たちにこの報告書を送りつけてやりました。」

   モーガンさんは、女性側にも多くの問題があるとしています。

   「今なお、多くの潜水工事会社が女性潜水士の採用に消極的な原因は、
  女性側にも問題があるのです。会社としては、女性潜水士のために特別な部屋、
  特別なロッカールーム、特別なシャワー室を設ける余裕は無いのです。潜水士を
  目指す女性はその点を十分に理解しなければなりません。特別な待遇が欲しけれ
  ば、仕事で結果を出して会社に認められなければなりません。男性と同じ場所で
  生活して、セクハラなどの問題が起きないか心配する人も多いかもしれませんが、
  セクハラは法的に罰せられる行為ですし、お互いの信頼関係があればそのような
  事態に陥ることはありません。それよりも、あなた方と同じ部屋で生活しなければ
  ならない男性潜水士たちのほうが、奥様への上手な説明を考えるのに苦労して
  いるはずです。女性にしろ男性にしろ、最終的な成功の秘訣は、個々の適応力に
  あるのです。」
 
   女性の潜水士が正式に認められるようになったのは、昭和61年の高気圧作業
  安全衛生規則の改正からと、長い潜水の歴史の中ではつい最近のことですが、
  公表された潜水士試験の結果から推測すれば、今までにおよそ1000人以上の
  「女性潜水士」が誕生しているはずです。彼女達は一体何処へ行ってしまったの
  でしょう。多くはレジャー関係の仕事についていると思われますが、作業潜水士を
  希望する女性も少なからずいるはずです。
 
   昨年亡くなったレーガン元大統領の奥さん、ナンシーさんはこういっています。

   「女性はいわばティーバックのようなもの。彼女が熱いお湯の中に入るまで、
  誰も彼女の本当の力を知ることはできない。」

   停滞気味の私達の業界を打破するのは、もしかしたら女性の力かもしれません。
  私達の業界も、女性に対して門戸を開け放つときが近づいているのです。

 
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